「HONOKA」が取り組むサスティナブルなものづくりについて

インタビュー

【サローネサテリテグランプリ受賞】
デザインラボHONOKAが取り組むサステナブルなものづくりとは

2024.4.30

左から、横山さん(HONOKA)、鈴木さん(HONOKA)

はじめに

背景の異なる6名のプロダクトデザイナーによるデザインラボ【HONOKA】。彼らが「畳の魅力を次世代へ発信したい」と取り組んでいる「TATAMI ReFAB PROJECT」は、廃棄される畳や畳の原料であるい草と生分解性樹脂、3Dプリント技術を組み合わせて、現代の暮らしに合った作品を作り上げるものです。
2023年4月にはミラノサローネ国際見本市にて、開発した畳樹脂を使用した家具ブランドを提案し、見事、サローネサテリテ・アワードでグランプリを受賞しました。さらに、2024年2月には世界三大デザイン賞といわれるiFデザインアワードで金賞を受賞するなど、国内外から注目を集めるプロジェクトとなっています。

今回はHONOKAより、鈴木僚さん・横山翔一さんにお話を伺いました。TATAMI ReFAB PROJECTはどのようにして生まれたのか。HONOKAの作品にはどのような思いが込められているのか。インタビューを通してひもときます。

 

畳を現代の暮らしに
- TATAMI ReFAB PROJECTの背景とは -

ー HONOKAでは、TATAMI ReFAB PROJECTとして「い草」「生分解性樹脂」「3Dプリンター」の3つをかけ合わせた作品づくりをされています。この3つはどのように出会ったのでしょうか。

横山さん

私の住んでいた家の近くに畳屋さんがあったのですが、ゴミ捨て場のような場所に、一見きれいな畳がたくさん捨てられていたんですね。本来畳もリサイクルできるものですが、カビが深くに入り込んでいると廃棄せざるを得ないのだと聞きました。

見た目はきれいでも廃棄されてしまう大量の畳との出会いから、私は「い草と樹脂を混ぜる」という研究を始めました

ー 当時から使用する樹脂にも「環境に優しいものを使おう」といったこだわりがあったのですか。

横山さん

最初の基礎研究では、エポキシ樹脂を使用してました。HONOKAとしてTATAMI ReFAB PROJECTを始めるときに、混ぜる樹脂もちゃんと考えた方がいいんじゃないかってメンバーに提案したんですよ。

最初は植物性の樹脂で生分解性をもつPLA(ポリ乳酸)を使おうと考えていたのですが、海外ではPLAの分解に結構時間がかかることが問題になっていると知って。より早く土に還る素材を探していたところ、ネクアスさんの樹脂にたどり着いたという流れです。

ー 3Dプリンターでの家具・ものづくりをやってみようと思ったきっかけはなんでしたか。

横山さん

4~5年前に参加したデザインコンペがきっかけです。当時日本ではまだそんなに3Dプリントの研究が盛んではなかったのですが、オランダの方では特に盛んに研究されていて、海藻と樹脂を混ぜて3Dプリントするといった活動もあったんですよ。「い草と樹脂を混ぜる」という研究も、実はそういった事例を見て、実現可能なんじゃないかと感じました。

鈴木さん

TATAMI ReFAB PROJECTでは、畳産業という「産業」に対して、どういう貢献ができるかということを考えています。御存知の通り畳産業ってどんどん衰退していますよね。い草農家さん、畳職人さんも減っていて技術の継承先がない。

単純に「畳屋さんの畳」というものに対してではなく、文化や産業といった大きなものを後世に伝えたい。ということを軸にプロジェクトを進めています。

インタビューに応じる鈴木さん

 

素材の持つストーリーを次世代へ
ー素材づくりから始まるHONOKAのこだわりー

ー 最初のインスピレーションから実際の作品にしていく過程で、苦労されたことはありましたか。

鈴木さん

大きく2つあります。
1つは、素材の開発をするということ。もう1つは3Dプリンタっぽさを感じさせない作品にすることです。

3Dプリントの作品って、誰が見ても「これ3Dプリンターで作ったよね」ってわかってしまうような、独特な質感を持っていることが多く、ちょっとネガティブな印象がありました。

そこで、それを感じさせない新しい表現で、大型3Dプリンターだからこそできる手法を模索しました。デザイナー自身が考えるから、新しい表現ができるというところがあるんですけど。そうやって試行錯誤してたところが大変だったし、楽しかったですね。

横山さん

素材開発の点でいうと、特に色味については、あの緑にするのに結構苦労しています。

樹脂とい草を混ぜただけでは茶色になってしまうんですよね。そこにどのくらい緑の顔料を混ぜるか。い草の配合量によっても見え方が変わるので、何度も議論を重ねて今の色を生み出しました。

い草と樹脂を混ぜ合わせた、3Dプリント用ペレット

ー HONOKAのインテリアを、どのような場所に取り入れてほしいと考えていますか?

鈴木さん

大きく二つの軸で考えて作品作りをしています。
一つは、素材の魅力とか、3Dプリンターの美しさを見せるアートピースとして取り入れていただくことです。ギャラリーもそうですが、旅館やホテルなど、ラグジュアリーだけど日本を感じたりとか一息つきたいみたいなところに置いていただく。
SORIやMUKURIはそういった取り入れ方をしていただけるラグジュアリーな商品です。

一方で、「多くの人に、い草と樹脂で生み出した素材の魅力を知ってほしい」という思いもあります。TRAYやVASEは、より多くの人にHONOKAの作品を手にとっていただけるようにと考えた商品です。

アートピースとなるようなラグジュアリーな商品。扱いやすいもので扱いやすい価格帯の商品。その両方のバランスを見ながら開発を進めています。

横山さん

世間からみたHONOKAイメージって、い草はもちろんあるけど、「3Dプリントをするデザイナー集団」ていう印象が強くなっているような気がしています。
でも僕達のコアは「自然素材を新しい技術と組み合わせて、素材が持つストーリーを次世代に伝えていくこと」なんです。

TATAMI ReFAB PROJECTは「畳を編み直す」というコンセプトですが、畳って、織物や編物みたいな構造体ですよね。そこに、3Dプリンターの裁縫に近い製法がうまくマッチしたと思っています。

HONOKAでは今後も、素材が持つ特徴と技術が持つ特徴が、何か一つのストーリーでくくれるような物作りをしていきたいです。だから、3Dプリンターに限らず新しく面白い技術を取り入れていきます。

インタビューに応じる横山さん

 

これからの活動について
ーTATAMI ReFAB PROJECTのゴールとその先の挑戦ー

ー これからのHONOKAやTATAMI ReFAB PROJECTの展望をおしえてください

横山さん

まず、TATAMI ReFAB PROJECTを完成させることです。
今は「材料を開発して、商品をつくり、販売している」という状況ですが、僕たちがこのプロジェクトで目指すゴールは、衰退している畳産業を盛り上げること。
なので、例えば、い草農家さんや畳職人さんに利益の一部を還元する体制をつくるとか、そういう体制づくりを含めて、プロジェクトとして完成させたいという展望があります。

鈴木さん

HONOKAは、昨年ミラノサローネでアワードを頂いて以降、いろいろな賞を受賞し、メディアや企業に興味を持っていただきました。具体的にコラボレーションするような活動も始まっています。
そのなかで、畳と3Dプリンタ以外の素材や技術を活用した新しい作品づくりを進めて、また皆さんに驚きを与えるような発信ができたらと思っています。

 

 

今回インタビューさせていただいたHONOKAから
VASE・TRAY・SORI・MUKURIの4商品を販売しております。

自然をほのかに感じる暮らしを体感しませんか?

 

商品のご購入はこちら

VASE

TRAY

SORI

MUKURI

おわりに

お二人へのインタビューを通して、TATAMI ReFAB PROJECTの持続可能性・古くからの日本の文化と先進技術の融合についてより理解を深めることができました。
廃棄されてしまう畳やい草をアップサイクルすることが目的ではなく、新しい活用の形を編み出し、産業全体を盛り上げていくことを目的が目的である。
そうして生み出された作品は、どれも洗練された美しさで思わず目が惹かれます。

HONOKAのプロダクトがそうであるように、私達が環境に優しい商品を選ぶためには、その商品や使われている素材、技術について、ストーリーを知ることが重要です。
本記事を起点に、HONOKAのストーリーに触れていただき、サスティナブルな商品を手に取る機会につながれば幸いです。

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