【サステナブルな未来へ】3Ⅾプリンターのエコなものづくり6選|やさしい素材JAPAN

 特集 

【3Ⅾプリンターで編み出すサステナブルな未来】ものづくりの課題解決へと導く3Ⅾプリンターの可能性

2024.8.1
3Dプリンタが出力している様子
SDGs対応が求められる中、ものづくり現場では特に大きな変化が必要です。大量生産のデッドストックや生産過程の無駄削減、持続可能な資源活用などに取り組む企業が増えています。また、消費者ニーズの多様化により、個別対応の製品需要も高まっています。

こうした課題を解決する方法として注目をされているのが「3Dプリンター」です。

3Dプリンターは、オンデマンド製造により必要な時に必要なものを適量作ることが可能で、生産過程の無駄を削減できます。また、廃材や植物樹脂を利用した材料の使用が進み、サステナブルなものづくりが広がっています。
本記事では、私たちの身近なところで活躍の幅を広げている3Dプリンターを活用した製品や取り組みをご紹介します。

畳×3Ⅾプリンター技術の融合 「TATAMI ReFAB PROJECT」

HONOKA
TATAMI ReFAB PROJECTの商品

TATAMI ReFAB PROJECTは大型3Dプリンターの技術を用いて、畳を現代の暮らしに編み直すプロジェクトです。古くから日本で愛されてきた畳は、香り豊かで肌触り良く調湿や消臭の性能を備えた植物から作られています。しかし生活様式の変化により、近年畳に触れる機会は少なくなりました。
そこで、こちらのプロジェクトでは、使い終えた畳や廃棄される原料を生分解性樹脂と混ぜ合わせ、新たな魅力の家具を製作。畳の魅力を次世代へと発信しています。現代になじむデザインとして昇華された、畳のようなテクスチャや造形が特徴の製品を多数販売中です。

TATAMI ReFAB PROJECTを主導するHONOKAは「自然素材を新しい技術と組み合わせて、素材が持つストーリーを次世代に伝えていくこと」をコアに活動を行っています。
HONOKAのこだわりやプロジェクト発足の経緯について伺ったインタビュー記事も合わせてご覧ください。

【サローネサテリテグランプリ受賞】デザインラボHONOKAが取り組むサステナブルなものづくりとは

VASE

VASE / ヴェース

TRAY

TRAY / トレイ

サローネサテリテ受賞品

Salone Satellite Award 1st Prize受賞(2023年)

プロジェクト名

TATAMI ReFAB PROJECT

素材

酢酸セルロース・い草 等

サステナブルポイント

受注生産によるストックの削減
廃棄予定の畳・植物性樹脂を原料に採用

メーカー

HONOKA

世界最大級の3Dプリントクリスマスツリー「表参道ヒルズクリスマスツリー」

アートディレクター矢島沙夜子
表参道ヒルズクリスマスイルミネーションの様子

2023年11月9日から12月25日の期間に開催された「OMOTESANDO HILLS CHRISTMAS ILLUMINATION 2023」。そのシンボルとして高さ10メートルの世界最大級3Dプリンター製クリスマスツリーが展示されました。
「RE-CRYSTALLIZED~再結晶~」をテーマに作られたツリーは、大小異なる約500個の雪の結晶やツリーを支えるメッシュ構造体で構成されており、これらのほとんどが3Dプリンターにて製造されました。また3Dプリントの材料には、100%リサイクル可能なPET素材が使用され、イベント終了後にケミカルリサイクルを実施。廃棄物を出さない取り組みとなっています。
デザイナーの発想をそのまま形にした繊細かつダイナミックなツリーを作り上げる一方、環境への配慮を実現する3Dプリンターのメリットを最大限に活用したプロジェクトでした。

3Dプリンターで雪の結晶を出力している様子
雪の結晶を組み合わせてツリーたツリーのパーツ
クリスマスツリーのコンセプト図

画像出典:3DP id.arts|表参道ヒルズに高さ10メートルの世界最大級3Dプリント製クリスマスツリーが登場|https://idarts.co.jp/3dp/3d-printed-christmas-tree/

プロジェクト名

OMOTESANDO HILLS CHRISTMAS ILLUMINATION 2023

素材

100%リサイクル可能PET素材 等

サステナブルポイント

リサイクル可能なPET素材を使用し、廃棄物を出さない取り組み

アートディレクター

矢島沙夜子

土を主原料とした国内初の3Dプリンターの家「Lib Earth House “modelA”」

株式会社 Lib Work
Lib Earth House modelAの外観

「Lib Earth House “modelA”」は、3Dプリンター技術を活用して土を主原料にしたモデルハウスです。3Dプリンターを活用することで複雑なデザインを容易に実現し、人の手では作れない形状を可能にしました。また、工期の短縮も大きな利点で、こちらのモデルハウスは約2週間で完成しています。
環境への配慮の面でも、3Dプリントの材料として、容易に入手可能な自然由来の土を採用することで、二酸化炭素の排出量を大幅に抑えることを目指しています。また、廃棄物も最小限に抑えられ、環境への負荷が軽減されます。さらに、地元の資源を活用することで、運搬や加工のコストも低減され、経済的にも持続可能な建築手法です。
製造元である株式会社Lib Workでは、このような3Dプリンターの特徴と土をかけ合わせた「未来の家」の開発を進めており、2025年に一般販売を目指しています。

Lib Earth House modelAの内観
Lib Earth House modelA施工の様子
画像出典:株式会社Lib work | 土を主原料とした「3Dプリンターの家」『Lib Earth House “modelA”』完成 | https://www.libwork.co.jp/earthhouse/

プロジェクト名

Lib Earth House

素材

土、藁、籾殻、セメント

サステナブルポイント

容易に入手可能で自然に還せる「土」を原料に採用

メーカー

株式会社 Lib Work

住宅のオートクチュール信仰に一石を投じる 一般向け3Dプリンター住宅「serendix50」

セレンディクス株式会社
serendix50の外観

「serendix50」は、セレンディクス社が開発した日本初の二人世帯向け3Dプリンター住宅です。この住宅は、50平米の1LDKで、キッチン、バス、トイレなどの水回り設備を完備しています。複数の提携する工場にある3Dプリンターで製造したモルタルのパーツを、乾燥させて輸送し、現場で組み立てる流れで建築され、施工時間はわずか44時間30分、価格は550万円と手頃です。
日本国内では住宅の値段が高騰し、70代まで続く住宅ローンが打ち出されるなど、家を持つことのハードルが高くなっているのに対して、建物の価値は20年ほどで0に近くなってしまいます。そこで、セレンディクスでは「住宅建築におけるロボット化」を進め、プロが企画した品質の良い建物を、スピーディーに低価格で提供することを目指しています。

serendix50施工中の様子
serendix50の外壁を3Dプリンターで出力している様子
serendix50施工中の様子‗2
画像出典:@Press | セレンディクスの二人世帯向け3Dプリンター住宅 serendix50が 「2023年 日経優秀製品・サービス賞」を受賞 | https://www.atpress.ne.jp/news/386715
 

プロジェクト名

serendix50

素材

鉄骨・コンクリート

サステナブルポイント

高い断熱性能によるエネルギー消費の抑制

メーカー

セレンディクス株式会社

市民参加型で作られた「東京2020オリンピック・パラリンピックの表彰台」

エス.ラボ株式会社
東京オリンピック表彰台アップ写真

東京2020オリンピック・パラリンピックの表彰台は、全国の小学校やドラッグストアで洗剤のボトルをリサイクルする「みんなの表彰台プロジェクト」として作成されました。3Dプリンターの開発・製造販売を行うエスラボ株式会社は、表彰台の下の模様の部分の製造を担当。使い捨てプラスチックを再生利用した材料を用いて、日本の伝統的な「組市松門」を取り入れたデザインを3Dプリントで立体化しました。表彰台を重くしすぎてはならない、さまざまな光やカメラのコンディションを考慮しなければならない、短期間で必要台数を量産しなければならないなど多岐にわたる複雑な要件が示されましたが、代表や社員の知識と3Dプリンターの特性を生かし完成へとこぎつけたそうです。
「オリンピックの表彰台を作る」という夢のようなプロジェクトには多くの市民が参加し、リサイクル意識の向上と持続可能な社会の醸成に一役買ったといえるのではないでしょうか。

ドラッグストアでのプラスチック回収の様子

ドラッグストアでのプラスチック回収の様子

学校でのプラスチック容器回収の様子

学校でのプラスチック容器回収の様子

オリンピック表彰台の全容

画像出典:PRTIMES|~P&Gによる事業協力のもと実施~東京2020組織委員会「みんなの表彰台プロジェクト」東京2020オリンピック・パラリンピック 表彰台が完成 大会史上初!使用済みプラスチック容器をリサイクル|https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000031986.html

プロジェクト名

みんなの表彰台プロジェクト

素材

使用済みプラスチック容器

サステナブルポイント

使用済みプラスチック容器の
市民参加型による持続可能な社会実現への意識づけ

メーカー

エス.ラボ株式会社 他

木片から建物を作り出す生産システム「Regenerative Wood」

株式会社三菱地所設計
Regenerative Woodの概要

「Regenerative Wood」は、三菱地所設計が開発した木質3Dプリント技術を用いた建物の生産システムです。このシステムでは、木の製材加工時に生じる木粉を3Dプリンターの材料として再利用し、廃棄物を再生可能な素材として活用しています。また、現場付近の木片を活用することで、原料を輸送する際に生じるCO2排出を抑制したり、一般の物流に載せられるよう3Dプリント時に出力部材の小材化を図ったりと、生産フロー全体で環境への配慮がなされています。

3D出力で作られた木製カウンター

3D出力で作られた木製カウンター

3D出力したパーツの結合部分のアップ写真

画像出典:PRTIMES|木質3Dプリントを用いて資源を循環させる生産システム『Regenerative Wood』を構築|https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000131799.html

プロジェクト名

Regenerative Wood

素材

木の製材加工時に生じる木片

サステナブルポイント

木片を活用するゼロ・ウェイストへの取り組み
輸送時に発生するCO2削減の工夫

メーカー

株式会社三菱地所設計

おわりに

3Dプリンターを活用した製品や取り組みについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。材料も様々、作られ方も様々で3Dプリンターによるものづくりの可能性を感じていただけたのではないでしょうか。
大量生産によるデッドストックや製造過程での無駄を削減できる3Dプリンターでのものづくりは、サステナブルな取り組みとして注目を集めています。材料に廃材や植物樹脂を使用することで、より環境にやさしいものを生み出す取り組みも活発です。
私たちのアイディアが新たな3Dプリンターの可能性を引き出すかもしれないと考えると、とてもワクワクしますね。まずはもっと多くの3Dプリンターで作られたものを知ってみるのはいかがでしょうか。

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